人間の生き方 一杯のかけそば
久しぶりに感動する話、、よく知られた話だそうだが、、---------------ここから----------------------この物語は、今から35年ほど前の12月31日、札幌の街にあるそば屋「北海亭」での出来事から始まる。そば屋にとって一番のかき入れ時は大晦日である。北海亭もこの日ばかりは朝からてんてこ舞の忙しさだった。いつもは夜の12時過ぎまで賑やかな表通りだが、夕方になるにつれ家路につく人々の足も速くなる。10時を回ると北海亭の客足もぱったりと止まる。頃合いを見計らって、人はいいのだが無愛想な主人に代わって、常連客から女将さんと呼ばれているその妻は、忙しかった1日をねぎらう、大入り袋と土産のそばを持たせて、パートタイムの従業員を帰した。最後の客が店を出たところで、そろそろ表の暖簾を下げようかと話をしていた時、入口の戸がガラガラガラと力無く開いて、2人の子どもを連れた女性が入ってきた。6歳と10歳くらいの男の子は真新しい揃いのトレーニングウェア姿で、女性は季節はずれのチェックの半コートを着ていた。「いらっしゃいませ!」と迎える女将に、その女性はおずおずと言った。「あのー……...
